大田市 島根大田店

島根県大田市は、日本海に面した島根県中部に位置する市です。大田は「おおた」ではなく「おおだ」と濁音で読みます。

大田市は出雲大社で知られる出雲市や、中国地方最大の川である江の川が日本海にそそぐ江津市などに隣接しています。

島根県は県東部の「出雲（いずも）地域」と、県西部の「石見（いわみ）地域」に大別されます。

「出雲」という地名の由来は、美しく雲が湧き出る様子を言い表した「八雲立つ出雲」によるものであるというのが一般的です。一方の「石見」は、諸説ありますが、「荒き波が崖に打ち寄せるところ」という意味の「石海（いわうみ）」が時を経て「石見」に変じたものだとされています。

このうち大田市は西部の石見地域に属し、同じく石見地域を構成する「浜田市」や「益田市」とともに「石見三田（いわみさんだ）」とも呼ばれています。

大田市を走る鉄道路線にはJR西日本の山陰本線があり、「大田市駅」のほかにも「波根駅」や「久手駅」など9つの駅に停車します。車でアクセスする場合は、京都市下京区と山口県下関市をつなぐ国道9号線や、広島県呉市から大田市を結ぶ国道375号線などが利用できますし、鳥取県鳥取市から下関市にいたる山陰自動車道の各ICなどを経由してくることも可能です。

大田市の主要産業は農業や水産業、畜産業などになります。また瓦の産地としても有名で、大田市を含む石見地方の「石州瓦（せきしゅうがわら）」は、愛知県三河地方の「三州瓦（さんしゅうがわら）」兵庫県淡路島の「淡路瓦（あわじがわら）」とともに 「日本三大瓦」 と称されています。

さらに大田市は、日本海と中国山脈にはさまれている土地柄から、四季折々の風光明媚な景色を楽しむことができるため、全国から旅行客が訪れる観光のまちでもあります。特に豊かな温泉に恵まれた場所としての知名度は高く、「三瓶（さんべ）温泉」や「池田ラジウム鉱泉」、「小屋原（こやはら）温泉」「温泉津（ゆのつ）温泉」など、旅行サイトの常連として名を連ねる人気スポットが数多く点在するのも大田市の特徴です。

大田市は歴史のまちでもあり、ゆかりの逸話は出雲地方に伝わる「出雲国風土記」の「国引き神話」に見ることができます。

神話の内容を簡単にまとめると、次のようになります。

「昔、ヤツカミズオミツノノミコトが出雲の国を見て、弱々しいその細長さを心配して『どこかから国を引いてきて縫い付けなければ』と考え、海の向こうを見ると新羅（しらぎ）という国があって、あまった部分が確認できたので、大きなすきで新羅の土地を切り離し、綱をかけて手繰り寄せ、縫い付けた国が『杵築（きづき）のみさき』となって、国を固めるために立てた杭が『佐比売山（三瓶山）』になった」というものです。

三瓶山（さんべさん）は大田市に位置する山で、「火神岳（ひのかみだけ）」（現在の大山）とともに国を引き寄せて繫ぎ止めた杭だったという内容です。神話のふるさととして知られる出雲大社のお隣のまち、大田市ならではの言い伝えといえるでしょう。

このほか、大田市の名前を全国的な規模で有名にしたものの1つに「石見銀山（いわみぎんざん）」があります。

石見銀山は、戦国時代の終わりから江戸時代の前期にかけて最盛期を迎えた日本最大の銀山で、当時世界の産銀量の3分の1を占めたとされています。1533年に博多の豪商神屋寿禎（かみやじゅてい）が開発を開始したと伝えられ、「灰吹法（はいふきほう）」という東アジアの伝統的な精錬技術を導入して生産した銀は品質的に非常に優れていました。

そのため東アジアだけでなく、ヨーロッパにも流通して、世界的規模での経済的、文化的交流を促しました。

2007年、大田市の石見銀山は「16世紀から17世紀初頭の石見銀山が世界経済に与えた影響」「銀生産の考古学的証拠が良好な状態で保存されている」「銀山と鉱山集落から輸送路、港にいたる鉱山活動の総体を留めている」という3点の理由から、ユネスコの世界遺産に登録されました。

このように、大きな特徴を持つ大田市ですが、ひとくちに大田市といっても、実はエリアによって地域の特色も異なってきます。

大田市は「中央」「東部」「西部」「三瓶」「高山」「仁摩（にま）」「温泉津」という7つの地域ブロックに分けられます。

中央ブロックは、大田町を中心とした商業地域と4町の農業地域で構成されたエリアです。

大田市の東側に位置する東部ブロックは、日本海に面した3町と中山間地域1町からなるエリアで、大田市の指定名勝である「掛戸松島（かけとまつしま）」や、国指定天然記念物「波根西の珪化木（はねにしのけいかぼく）」など数多くの絶景を見ることができます。

また、地域に根付いた伝統文化の継承にも熱心に取り組み、地域住民参加型の事業にも着手して県内外からの来訪者を多く集めています。

西部ブロックは、日本海に面した3町と内陸の1町からなる地域で、漁業と農業が主な産業です。日本海沿いの和江漁港（わえぎょこう）には4つの市場が統合した大型の「JFしまね大田水産物地方卸売市場」があり、漁業を志して移住する若い世代が増加するなど、活況を見せています。

大田市の南東部に位置し、島根県のほぼ中央にもあたる三瓶ブロックは、三瓶山を中心にした3地区で構成されています。三瓶山を観光資源としてクロスカントリーコースなども整備、キャンプやアウトドアを楽しむ人が県内外から訪れるほか、温泉施設も完備した温泉街として、幅広い世代に向けて来訪をアピールしています。

高山ブロックは大田市の南西部に位置し、日本遺産の大江高山（おおえたかやま）と仙ノ山（せんのやま）をいただいた4町で構成されるエリアです。

世界遺産として登録された「石見銀山」を中心に、史跡指定を受けた矢滝城山（やたきじょうざん）や大田市無形民俗文化財の小笠原流田植え囃子（おがさわらりゅうたうえばやし）などが引き継がれる地域としても知られています。

大田市の中央部に位置する仁摩ブロックは、自然景観に富んだ4地区からなるエリアとして知られます。その1つに、国の天然記念物として認定された「琴ヶ浜（ことがはま）」があり、歩くと音が鳴る日本三大鳴り砂浜として地域の名所になっています。

神話に登場するスサノオノミコトが、朝鮮半島から帰還する途上、体を休めた場所とされる「韓島（からしま）」も仁摩ブロックにあります。

また、溶岩が空に昇る流のように見える「龍巌山（りゅうがんざん）」も人気のスポットとして知られています。大田市の西の端に位置し、さらに島根県の東西のほぼ中央にあたるのが温泉津ブロックで、全長20kmにも及ぶ海岸線のあちこちにたたずむ巨石が、見る人を圧倒するダイナミックな景観を生みだしていることでも有名なエリアです。

温泉津温泉街の町並みを含めた沖泊漁港（おきどまりぎょこう）や銀山街道の景観がユネスコの世界遺産に登録されたことでも注目を集め、以来、来訪者は増加の一途をたどっている地域でもあります。また温泉津ブロックは、温泉街として唯一「重要伝統的建造物群保存地区」に指定されていることも特記事項として挙げることができるでしょう。

大田町大田は、エリアとしては中央ブロックに属します。JR大田市駅から車で約5分、徒歩でも10～15分程度で到着できる距離です。山陰自動車道であれば「出雲IC」から約30分、「江津IC」からは約50分が目安となります。

周辺施設としては、大田市役所や太田市立病院、大田商工会議所、大田市民会館などといった大田市の中心機能が集積しているほか、近隣には日本遺産にも認定された「物部神社（もののべじんじゃ）」「松代鉱山の霰石産地（まつしろこうざんのあられいしさんち）」「鬼村の鬼岩（おにむらのおにいわ）」という3つの構成文化財もあります。

同エリアは、県の「小さな拠点づくり」モデル地区推進事業の対象地域でもあり、買い物や交通など住民生活に必要な機能の確保に積極的に取り組んでいます。

島根県大田市は、歴史的に貴重な土地として魅力溢れる街なのです。